NPO法人が法人カードを作る際の3つのポイントとおすすめカード4選
監修者:トータルマネーコンサルタント 新井智美
民間の非営利組織であるNPOにも、経費の支出はあります。非営利で目的を持って集まっている組織だからこそ、経費の支払いや処理の手間は少なく済ませたいものですよね。
NPOを運営している人やNPOで働く人なら、NPO法人名義の法人カードを作って経費処理を簡素化したいとお考えではありませんか。
今回の記事では、NPO法人が法人カードを作るときの注意点とおすすめ法人カードを紹介していきます。
記事を読むことで、NPO法人が法人カードを作るためのポイントを理解し、NPO法人でも作れるおすすめの法人カードを申し込めるようになります。
この記事で一押しの法人カード
この記事の目次
- 法人カードはNPO法人でも申込可能
- 法人カードを申し込めるのは法人代表者または個人事業主
- NPO法人が法人カードを申し込む際のポイント
- 法人登記が必要
- NPO法人名義の銀行口座を開設しておく
- 印鑑カードも発行しておこう
- NPO法人が法人カードを作る5つのメリット
- 収支の処理が簡単になる
- 付帯サービスを利用できる
- 業務で必要なものをネット通販で購入しやすくなる
- ETCカードも発行でき便利
- 利用額に応じてポイントが付いてお得
- NPO法人が法人カードを作るときの3つのデメリット
- 年会費が発生する
- 審査に通過しづらい
- 代表者個人のクレヒスがよくないと悪影響を受ける
- NPO法人におすすめの法人カード5選
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード
- セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
- ライフカードビジネスライト
- 三井住友ビジネスクラシックカード
- セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
- まとめ
法人カードはNPO法人でも申込可能
法人カードを申し込めるのは会社の代表者や個人事業主に限られているわけではありません。地方自治体や会社以外の法人でも法人カードを申込可能です。
この章では、なぜNPO法人が法人カードを申し込めるのかを解説していきます。
法人カードを申し込めるのは法人代表者または個人事業主
法人カードを申し込めるのは、個人事業主か法人代表者です。会社が申し込むわけではなく、あくまで代表者である個人が申し込みます。
例えばアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードでは、申し込みの際の本人情報記入欄には、氏名や生年月日など、個人的な情報を記入するようになっています。
このように、法人が法人カードを申し込む際、申し込めるのは名義人となる法人代表者または個人事業主です。
法人の対象は会社に限定されていない
株式会社や有限会社などの会社でなくても法人であれば、法人カードを申し込めます。社団法人や学校法人、地方自治体なども申し込めるため、NPO法人でも申込可能です。
例えば、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは申込対象を「法人格のある法人代表」としているため、会社に限定しているわけではありません。
全ての法人が審査に通過するとは限りませんが、法人であれば会社でなくても申し込みできます。
個人事業主専用カードはNG
法人カードの中には、申込対象を個人事業主に限定しているカードもあります。このようなカードは、NPO法人は申込できません。
個人事業主限定の法人カードの一例です 。
- オリコEX Gold for Biz S
- FreCaなど
上記のカードは対象が個人事業主に限られているため、NPO法人としては申し込みできません。NPO法人が法人カードを申し込むなら、法人対象の法人カードを選びましょう。
この章では、なぜNPO法人が法人カードを申し込めるのかを解説してきました。次の章では、NPO法人が法人カードを申し込む際のポイントを解説していきます。
NPO法人が法人カードを申し込む際のポイント
NPO法人が法人カードを申し込むなら、あらかじめ準備をしておくことで、手続きがスムーズになります。
この章では、NPO法人が法人カードを申し込む際のポイントを紹介していきます。
法人登記が必要
NPO法人が法人カードを申し込む際、審査で必要な書類の提出を求められます。一部の法人カードは代表者の身分証明書だけで審査できますが、ほとんどのカードは登記簿謄本の提出が必要です。
例えば、三井住友ビジネスカードを申し込む場合には、6カ月以内に発行された登記簿謄本が必要です。
登記簿謄本の提出が求められることから、法人登記されていないと法人カードの作成は難しいでしょう。
NPO法人名義の銀行口座を開設しておく
法人カードの引き落とし口座は法人名義口座からでなくてはなりません。個人事業主であれば個人口座からも可能ですが、NPOは法人なので、個人口座からの引き落としができません。
引き落とし口座を設定しないと作れない法人カードも多いです。また、銀行口座の審査に通過しないようなNPO法人の場合、法人カードを作るのは難しいでしょう。
法人カードを作る前に、まずはNPO法人名義の銀行口座開設を行い、引き落とし口座設定がスムーズにできるようにしておくのがおすすめです。
印鑑カードも発行しておこう
法人カードを作るときの必要書類である登記簿謄本の代わりに、印鑑証明書などで済む場合もあります。印鑑証明書は印鑑カードがあれば窓口やオンラインなどで簡単に発行でき、登記簿謄本の発行より手数料も少し安いです。
法務局での書類取得にかかる費用は下記の通りです。
登記簿謄本 | 480円~600円 |
---|---|
印鑑証明書 | 390円~450円 |
費用を抑えられることや、法人カード作成以外の手続きもスムーズになります。NPO法人を法人登記したのであれば印鑑カードを発行しておくといいでしょう。
この章では、NPO法人が法人カードを申し込む際のポイントを紹介してきました。次の章では、NPO法人が法人カードを作るメリットを解説していきます。
NPO法人が法人カードを作る5つのメリット
NPO法人が法人カードを作ることで、処理の軽減化をはじめとするさまざまなメリットがあります。この章では、NPO法人が法人カードを作ることで得られるメリットを紹介していきます。
- 収支の処理が簡単になる
- 付帯サービスを利用できる
- 業務で必要なものをネット通販で購入しやすくなる
- ETCカードも発行でき便利
- 利用額に応じてポイントが付いてお得
以下説明いたします。
収支の処理が簡単になる
NPO法人の支出を法人カードを使った支払いにできるだけまとめることで、支払処理の手間が少なく済みます。これまで、出金ごとに伝票を作って支払処理をしていたNPO法人でも、支払回数は月に1回に。また、経理ソフトと連動している法人カードも多く、毎回入力する手間も省略できます。
例えば、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは、クラウド会計ソフトfreeeと連携していて、効率的に支払処理できます。
法人カードを作ることで支払処理を効率化し、NPO法人本来の目的に集中しやすくなります。
付帯サービスを利用できる
NPO法人は非営利組織とはいっても、有給の職員がいる場合もあります。職員に追加カードを発行すると、法人カードの付帯サービスを利用できるので、職員も付帯サービスを利用可能です。
会社のように営利を追求する団体ではないため、なかなか福利厚生の導入が難しい場合も多いですが、法人カードを導入することで費用を抑えつつ導入できます。
法人カードの導入により、支払い以外の付帯サービスも利用できる点が大きなメリットです。
業務で必要なものをネット通販で購入しやすくなる
法人カードがない場合、業務で必要なものをネット通販などで購入する場合も、支払いは振り込みか代引きです。どちらも手数料がかかることが多いうえに、毎回の支払手続の手間がかかってしまいます。
法人カード決済することで支払いは毎月1回で済むため、毎回支払いする手間が省略できるうえ、支払手数料がかかりません。
法人カードを導入するだけで毎回発生していた手数料を抑えられ、支出の削減につながります。
ETCカードも発行でき便利
法人カードを発行することで、付帯カードであるETCカードも発行できます。
これまで個人が立て替えていた高速道路利用代金も、法人カードの利用金額として一括請求されるため、精算の手間がかかりません。
法人名義のETCカードを発行する方法は法人カードの付帯カードを作る以外にもありますが、出資金や手数料が高額なので、非営利組織が作るカードとしては現実的ではありません。
このように法人カードのメリットには、ETCカードが比較的少ない費用負担で作れて費用を抑えられる点があります。
利用額に応じてポイントが付いてお得
法人カードを作る大きなメリットのひとつが、利用額に応じてポイント付与されることです。現金や銀行振込での支払いの場合ポイントが付くことはありませんが、法人カードでの支払いに切り替えるとポイントが付くようになり、現金よりお得です。
ポイント付与率や還元率はカードによって異なります。
ポイント付与率 | 100円~1,000円利用で1ポイント |
---|---|
ポイント還元率 | 0.3~1.0% |
中にはポイントが付かない法人カードもありますが、ポイントが付くカードを選ぶことで、経費の節約にもつながります。
この章では、NPO法人が法人カードを作ることで得られるメリットを紹介してきました。
次の章では、先に確認しておきたいデメリットも紹介していきます。
NPO法人が法人カードを作るときの3つのデメリット
NPO法人が法人カードを作るうえで、どうしても避けられないデメリットもあります。
- 年会費が発生する
- 審査に通過しづらい
- 代表者個人のクレヒスがよくないと悪影響を受ける
詳しく見ていきましょう。
年会費が発生する
一部のカードを除いて、法人カードには年会費が発生します。振込手数料を抑える目的で法人カードを作る場合、年会費が高額になるとかえって負担が大きくなってしまうこともあります。
しかし、下記のような一部の法人カードなら年会費無料なので年会費を抑えたいNPO法人におすすめです。
- ライフカードビジネスライト(スタンダード)
- セゾンパール・アメリカン・エキスプレス・カード
(初年度無料、翌年度年1回以上の利用で無料)
上記のような一部年会費無料のカードはあるものの、付帯サービスの充実を求めれば求めるほど、年会費が高額になってしまいます。
審査に通過しづらい
NPO法人は、民間の非営利組織であり、利益を上げることを目的には活動していません。営利組織である会社に比べるとどうしても収入が少なくなってしまいます。
支払い能力が疑問視され、審査に落ちてしまうケースも会社に比べると多い傾向にあります。
たとえ登記をしていたとしても会社よりは審査に通過しづらい点は大きなデメリットです。
代表者個人のクレヒスがよくないと悪影響を受ける
NPO法人の支払能力に問題ない場合でも、代表者個人のクレジットヒストリー(以下、クレヒス)に問題があると、審査に落ちてしまうことも多いです。万が一NPO法人がカードの支払いができなくなった場合、代表者に支払義務が生じることが理由にあります。
しかしクレヒスに問題がある代表者は支払いできなくなってしまう可能性も否定できません。
カード会社としてはできる限り貸し倒れのリスクを防ぎたいことから、代表者個人のクレヒスがよくない場合、NPO法人のカードの審査に悪影響を及ぼしてしまいます。
この章では、NPO法人が法人カードを作るうえで避けられないデメリットを解説してきました。次の章では、NPO法人におすすめの法人カードを紹介していきます。
NPO法人におすすめの法人カード5選
この章では、ここまで紹介してきたメリットやデメリットを踏まえながら、NPO法人が作るのにおすすめの法人カードを紹介していきます。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カードは、アメリカン・エキスプレスが直接発行している法人カードです。一般カードですが他社のゴールドカードと同程度の付帯サービスが付いています。
年会費 | 無料 |
---|---|
追加カード年会費 | 6,000円(税別) |
ETCカード | 500円(税別)/枚 |
主な付帯サービスは下記の通りです。
- ビジネス・セービング(経費の見直しに役立つサービス)
- 福利厚生プログラム「クラブオフ」年間登録料無料
- アメリカン・エキスプレス
- トラベル オンラインなどの出張に役立つサービス
- 空港ラウンジ本人と同伴者1名無料
- 支払い100円ごとに1ポイント
年会費は高額でも、他社なら有料の福利厚生プログラムの維持費が無料だったり、出張に役立つサービスが多かったりと、付帯サービスがとても充実しています。
職員が出張する機会も多いような、活発に活動しているNPO法人であれば、とても役に立つサービスが付いている法人カードです。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、ゴールドカード並の年会費で持てるプラチナカードとして知られています。
年会費 | 初年度無料 2年目以降20,000円(税別)ただし前年度200万円以上利用があれば10,000円(税別) |
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追加カード年会費 |
3,000円(税別)/枚 4枚まで発行可能 |
ETCカード |
無料 1枚のクレジットカードに対して5枚まで発行可能 |
主な付帯サービスは下記の通りです。
- プライオリティ・パスの無料付帯
- 海外・国内旅行傷害保険の自動付帯
- JALのマイルにするとお得
- 1,000円ごとに永久不滅ポイント1ポイント貯まる
- iD・QUICPayともに対応
審査は個人名義で対応可能。起業したての会社やフリーランスの方でも、面倒な登記書類などは必要なく申込みが可能なので、NPO法人であっても持ちやすい法人カードといえます。
最短3営業日でカード発行が可能というスピード感も嬉しいポイント。
ライフカードビジネスライト
ライフカードビジネスライトは、年会費無料で持てる法人カードです。審査に本人確認資料は必要なく、比較的審査に通過しやすい法人カードとして知られています。
年会費 | 無料 |
---|---|
従業員カード | 年会費無料(3枚まで) |
ETCカード | 無料(1枚まで) |
主な付帯サービスは下記の通りです。
- クラウド会計ソフトfreee連携
- 弁護士無料相談1時間無料 ・カーシェアリング優待
- VISAまたはMastercardのビジネス優待サービス
- WEB明細対応
ポイントサービスはなく、付帯サービスは限られているものの、年会費無料は大きな魅力。費用負担がネックになることも多いNPO法人でも持ちやすい法人カードです。
三井住友ビジネスクラシックカード
三井住友ビジネスクラシックカードは、三井住友カードが発行する法人カードです。カード使用者は20名以下を目安に追加カードを発行可能で、職員が多いNPO法人にも対応できます。
年会費 | 1,250円(税別) |
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追加カード年会費 | 400円(税別) |
ETCカード | 初年度年会費無料 |
主な付帯サービスは下記の通りです。
- JR東海エクスプレス予約サービス(プラスEX会員)
- 海外旅行損害保険
- ビジネスサポートサービス
- 福利厚生代行サービス(320円/人~)
- ショッピング補償 など
国内外の出張に便利なサービスやビジネスサポートサービスなど、あると便利なサービスが付帯しています。少ない費用負担をすることで職員の福利厚生などを充実させたいNPO法人におすすめです。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、セゾンカードが発行する法人カードです。追加カードは4枚まで無料で発行・利用することが出来ます。
年会費 | 1,000円(税別) |
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追加カード年会費 | 4枚まで永年無料 |
ETCカード | 年会費永年無料 |
主な付帯サービスは下記の通りです。
- 特定加盟店での利用でポイント4倍
- Xサーバー初期費用優待
- Wework優待
- ビジネスアドバンテージ
年会費が1,000円(税別)と非常に維持コストが低いのに対し、法人にとって必要不可欠なサービスなどにおいて還元率が高かったり、優待価格で利用できたりと、非常にコスパのいいカードです。
この章では、NPO法人が作るのにおすすめの法人カードを紹介してきました。法人カードの作成を検討中のNPO法人は、参考にしてください。
まとめ
今回の記事では、NPO法人が法人カードを作る際の注意点とおすすめ法人カードを紹介してきました。 審査が厳しいなどのデメリットはありますが、経費処理の簡素化をはじめとする、導入することでのメリットも大きいですよね。
申し込む前には、法人登記をしておく、NPO法人名義の銀行口座を開設しておくなどの準備をしっかりしておくことで、審査がスムーズにすすみます。
また、年会費の負担や付帯サービスの内容などで比較しながら、適した法人カードを選ぶことも大切です。
適した法人カードは見つかりましたか。今回の記事を参考に、ご自身が運営しているNPO法人に適している法人カードを申し込んでみてくださいね。
- 監修者:トータルマネーコンサルタント 新井智美
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年間、100本以上の記事執筆や監修を行っていますが、同じタイトルの記事でも、その時の経済情勢や法改正などで、内容は日々変わっていきます。 『かかりつけのお金と人生の相談者』いうスタンスを大切に、最新かつ正確な情報をお届けすると共に、読者にとって「わかりやすい」記事を提供することを心がけています。