個人事業主のクレジットカード選びで比較すべきポイントとおすすめのカード4選
監修者:トータルマネーコンサルタント 新井智美
個人事業主としてクレジットカードを使用するなら、個人カードではなく法人カードがおすすめです。法人カードにも個人カードと同様にポイントプログラムがあるのはもちろん、ビジネスに特化したサービスも用意されています。つまり、絶対に個人カードを使ってはいけないということはありませんが、事業で使うなら事業用に用意された法人カードの方が無難なだけでなくお得です。
しかし、法人カードにもさまざまなスペックやサービス内容を持ったカードがあります。より活用するためには、自分の事業内容に適した選び方が重要です。この記事では、法人カード選びで各カードを比較する際のポイントと、個人事業主におすすめの法人カードを4選紹介します。
この記事の目次
- 個人事業主が持つべきクレジットカードは法人カード
- 個人カードは事業には使えない
- 個人事業主専用の法人カードもある
- 法人代表者が持つ法人カードと個人事業主が持つ法人カードには差があることも
- 個人事業主が忘れずに比較したい法人カードのスペック6点
- ステータスシンボルとして使えるか
- 年会費の額
- 追加カードの発行に対応しているか
- 利用限度額に不足はないか
- 支払方法に柔軟性はあるか
- キャッシング枠を設定できるか
- しっかり比較して選んだ法人カードでできること3つと注意点
- 経費管理が楽になる
- キャッシュフローが改善される
- 付帯サービスでビジネスが加速する
- 利用残高は借金と同じと考えるべし
- 個人事業主におすすめの法人カード4選
- アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
- オリコEX Gold for Biz S
- 三井住友ビジネスゴールドカード for Owners
- セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
- まとめ
個人事業主が持つべきクレジットカードは法人カード
個人事業主の場合、プライベートとビジネスの境界が曖昧になりやすいことがあります。たとえば、経費を決済する場合に個人カードを利用することも珍しくありません。しかし、個人事業主が持つべきカードは法人カードです。
個人カードは事業には使えない
個人カードを経費決済に利用する個人事業主は少なくありませんが、本来の目的からいえば、個人カードは事業には使えないカードです。個人カードはあくまでもプライベートのために使われます。
とはいえ、経費決済に利用すればただちに不正利用になるかといえば、そうでもありません。一般的な個人カードの規約には、クレジットカードの現金化と呼ばれる行為など、明らかにカード会社の権利を侵害する行為や、詐欺的な行為を禁止するための文言があります。
一方で、事業性の用途全般を禁止する文言までは見当たらず、解釈の仕方によってはそういえなくもないといった程度です。
しかし、個人カードを事業に使用することは経費管理や仕分け、決算との絡みで好ましいとはいえません。そのため、個人カードは事業には使えないと考えた方がベターです。
個人事業主専用の法人カードもある
法人カードは法人でなければ持てないという誤解をしている人もいます。法人カードという呼び名からはそのように考えても仕方ありません。
法人カードは中小規模事業者向けのカードと大企業向けのものに分かれます。俗にコーポレートカードと呼ばれる大企業向けのカードは、法人でなければ申し込むことさえできないケースが多いです。
しかし、ビジネスカードとも呼ばれる中小規模向けの法人カードには、法人代表者だけでなく個人事業主にも発行されるカードがたくさんあります。しかも、中には個人事業主専用の法人カードまで用意されているのが実情です。
法人代表者が持つ法人カードと個人事業主が持つ法人カードには差があることも
コーポレートカードとビジネスカードでは、対象となる企業規模の違いからくる差があります。同様に、法人代表者と個人事業主とでは、同じビジネスカードといっても差があるケースが少なくありません。
といっても、個人事業主が持つ法人カードのスペックが劣るといった差ではなく、立場の違いによる用途の差というべきものがほとんど。たとえば、法人代表者向けの法人カードにはないキャッシングサービスが、個人事業主向けの法人カードには付帯できるといった内容です。
次の章では、個人事業主が法人カードを比較するにあたり、外せないカードスペックについて解説します。
個人事業主が忘れずに比較したい法人カードのスペック6点
個人事業主が持つべき法人カードスペックの比較ポイントは以下の6つです。
以下で詳細に説明いたします。
ステータスシンボルとして使えるか
個人カードと法人カードの違いには、実務上の問題とともにステータスシンボルとして使えるか否かの問題もあります。ビジネスシーンで個人カードを取り出すのは相手に与える印象が悪いという考えです。
法人カードであっても、ステータスの高低はしっかりと考えたいポイント。一般には、ゴールド以上のランクのカードを使いたいところ。カード会社ごとのステータスでいえば、例えばアメリカン・エキスプレスのステータスはかなり高いです。
年会費の額
法人カードの年会費は、一般に個人カードの年会費よりも高いと考えて間違いないでしょう。年会費の高さは、概ねサービスのレベルに関係しています。つまり、法人カードの利用が多く、付帯サービスその他のサポートなどの利用機会も多いなら、年会費の額を気にする必要はないかもしれません。十分に元がとれるどころか、かなりお得になる可能性もあるためです。
しかし、そこまで使い込まないなら、年会費の安いカードを選ぶことも選択肢にあがります。法人カードの年会費は経費で落とすことが可能ですが、経費を無駄に使う必要はないでしょう。
追加カードの発行に対応しているか
自分ひとりで仕事をしており、従業員を雇う可能性もないということであれば、法人カードは1枚あれば足ります。しかし、近い将来に従業員を雇い、その人にも事業用のカードを持たせたいという場合は、追加カードの発行可能枚数をチェックすることも重要です。
法人カードの追加カード発行可能枚数は、カードによってかなり違います。個人事業主専用カードの中には追加カードを発行できないものもあるため、確認を怠ると後々困ることになりかねません。必要最低限の追加カード発行には対応していることをしっかり確認しておきましょう。
利用限度額に不足はないか
法人カード選びの失敗談で多いのが、いざ使い出してみれば利用限度額が足りなかったというものです。利用限度額がいくら必要かは、事業内容や規模によって異なります。
目安としては、細かく想定した毎月の決済額の2倍プラスアルファが、最低限必要な法人カードの利用限度額です。カードの利用代金が翌月に引き落とされて、使った枠が回復するまでのタイムラグを考えると、このくらいは必要といえます。
支払方法に柔軟性はあるか
法人カードの主要な導入目的は、経費管理の効率化であり、キャッシュフローの改善です。その意味でいえば、利用代金の支払方法は翌月一括払いが妥当でしょう。とはいえ、個人事業主にもいろいろな事情があります。必ずしも翌月一括払いだけで間に合うとはいえないケースもあるでしょう。
そこまで考える場合は、分割払いやリボ払いなど、複数の支払方法に対応している法人カードを選ぶのがおすすめです。
キャッシング枠を設定できるか
もう一点、個人事業主ならではの法人カード活用法にキャッシングがあります。法人カードにキャッシング枠は似合わないという考えは強いものの、個人事業主が使う場合はキャッシングもアリという考えが珍しくないのが実情です。
どうしても目先の決済にいくらかのお金が必要というケースでは、法人カードのキャッシング枠を使う手もアリでしょう。カードによっては年率が15%のものもあり、銀行を除き一般的には18%が多いため、15%なら比較上ではお得といえます。
次の章では、法人カードの主なメリット3つと注意点について解説します。
しっかり比較して選んだ法人カードでできること3つと注意点
自分に適した法人カードを選ぶことで期待できる主なメリットは以下の3つです。
気を付けたい注意点と合わせてチェックしていきましょう。
経費管理が楽になる
法人カードを導入することで、経費を使う度に現金をやり取りしたり、振り込む手間をかけたりといった煩雑さから解放されます。また、個人カードを経費決済に使っていたとすれば、法人カードにチェンジすることで、家事按分などの面倒な作業も不要です。
しかも、いつ、どこで、何に使ったかといった詳細についても、利用明細で一元管理できます。全体像を把握しやすく、無駄な経費を使っていないかをチェックすることも可能です。
従業員がいる場合は、経費の立替や精算といったお互いに面倒な作業をなくすことで、本来の業務に集中しやすい環境を作れます。
キャッシュフローが改善される
月に何度も支払いがあったり、突発的な経費決済が発生したりすると、支払い忘れや資金不足などに神経をすり減らすなどということになりかねません。法人カードの導入で、支払いを毎月1回の決まった日にまとめれば、こうした心配がなくなります。また、余裕のある現金を支払い日まで運用することも可能です。
付帯サービスでビジネスが加速する
法人カードに付帯する各種サービスには、個人事業主が自力で用意するには無理があるレベルのものがあります。また、さまざまなビジネスシーンに活用できるサービスも多く、単に経費面の改善にとどまらず、ビジネスを加速させる点でも法人カードが役立ちます。
利用残高は借金と同じと考えるべし
法人カードを導入するメリットは大きいですが、メリットの反対側にはデメリットも存在します。
法人カードで買ったり利用したりした商品やサービスの代金は、翌月以降にまとめて支払うことが前提です。当たり前のことですが、翌月の指定日には、決済口座に請求金額以上の残高を用意する必要があります。
法人カードは手元にお金がなくても限度額の範囲で利用できるため、うっかり使い過ぎるというケースがないとはいえません。後払いである以上、利用残高は借金と同じです。払えなければ信用情報に傷がつくなどのデメリットもあります。何より、カード決済が必須のサービスを事業で利用している場合、カードが使えなくなると事業の存続にかかわる大問題です。
法人カードの利用も計画的にしなければなりません。
最後の章では、個人事業主におすすめの法人カード4選を紹介します。
個人事業主におすすめの法人カード4選
個人事業主のビジネスに役立つおすすめの法人カード4選を紹介します。
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは、個人事業主が最初に検討したい法人カードです。
カードの基本性能
先に述べた比較すべきスペックの観点からみたアメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは、個人事業主に十分おすすめできるカードといえます。
まず、ステータスシンボルとしてはこの上ないアメックスのカードであり、しかもビジネス・ゴールドです。アメックスのカードは他社のワンランク上のステータスがあるともいわれており、ゴールドは他社のプラチナに相当するカードです。また、アメックスのカードが使えないというケースはほとんどないでしょう。
年会費は初年度無料となっており、翌年以降は31,000円(税別)とソコソコ高い金額ですが、付帯サービスを活用すれば十分にお得といえます。利用限度額は完全に会員次第となっており、一律の設定はありません。
おすすめポイント
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードの利用限度額は会員ごとに個別に設定されていますが、事前に承認を得ることで一時的に大きな利用も可能となる余地があります。また、デポジットという事前入金を利用すれば、利用限度額に関係なく決済可能です。
さらに、他社と比較して充実しているサービスもおすすめポイントといえます。たとえば、ショッピングプロテクションだけでなく、病気でイベントに行けなくなった場合などに使えるキャンセルプロテクションや、返品に使えるリターンプロテクションがある点です。
オリコEX Gold for Biz S
オリコEX Gold for Biz Sは、費用対効果のよい個人事業主専用の法人カードです。
カードの基本性能
ステータスシンボルとして使えるかという点ではアメックスと比較になりませんが、カードスペック的にはおすすめできます。初年度無料の年会費は翌年以降も2,000円(税別)という安さです。利用限度額は10万~300万円で、一般的な法人カードとしては幅が広いといえます。
おすすめポイント
この年会費の安さで空港ラウンジサービスや福利厚生サービスをはじめ、国際ブランドの各種サービスを利用できる点がおすすめです。また、10万~100万円のキャッシング枠を設定できる点も特筆できます。さらに、支払方法も複数用意されています。
注意すべき点は、個人事業主本人用の法人カードであり、追加カードの発行に対応していないことです。
三井住友ビジネスゴールドカード for Owners
三井住友ビジネスゴールドカード for Ownersは、個人事業主でも申し込みやすい法人カードのひとつです。
カードの基本性能
年会費はインターネットからの入会で初年度無料になります。翌年度からは10,000円(税別)ですが、条件を満たせば5,000円(税別)になる優遇制度があります。利用限度額は、50万~300万で、三井住友カードの個人カードと合わせた額です。また、このうち200万円までは分割やリボ払いの枠にできます。
おすすめポイント
ETCカードや国内外旅行傷害保険、ショッピング補償など法人カードに求められるサービスがほどよく付帯しているカードです。また、レンタカーや引越しなどが優待価格になるビジネスサポートサービスもついています。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、アメックスブランドのプラチナビジネスカードを手軽に持てる点が特徴のカードです。
カードの基本性能
カードのステータスとしては、本家のアメックスには及ばないかもしれません。しかし、カードスペック的にはアメックスのカードの比較相手になるカードです。年会費は20,000円(税別)で、年間のショッピング利用額が200万円以上になれば、翌年度が10,000円(税別)になる優遇制度があります。
おすすめポイント
カードの発送が審査結果のメールの翌日から最短で3営業日に行われるため、一般的な法人カードよりもスピーディーに手にすることができます。とにかく急いでいるという人におすすめです。また、は利用状況次第で1,000万円を超える限度額にもなりやすいといわれており、ヘビーユーザーにもおすすめの法人カードです。
まとめ
個人事業主が法人カードを導入する場合、考えるべきことはカードを使用する人数、つまり、必要なカード枚数と、2ヶ月あまりの経費決済に足りる利用限度額があるかなど複数あります。どれも便利に活用するためには欠かせないポイントであり、しっかりと比較検討しないと使えないカードになってしまいます。
また、出張が多いならチケットサービスや送迎サービスなどが役立つといったように、付帯サービスの内容も自分に合っているかを考えたいところです。経費で処理できるとはいえ、年会費が無駄になってしまわないように、使える法人カードを選んでください。
- 監修者:トータルマネーコンサルタント 新井智美
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