生活保護受給者はなぜクレジットカードが使えないのか?その理由を徹底解説

クレジットカードは、ネットショッピングをスムーズにしたりポイントやマイルを貯めたりすることができる便利なツールですが、生活保護を受けている人はクレジットカードを利用することができるのでしょうか?
残念ながら、その答えはNOです。もし生活保護を受けている人がクレジットカードを利用してしまうと、受給がストップしてしまうことがあるからです。
生活保護を受けている身で、クレジットカードを持って使うことができるのか、正しい情報が知りたいと思いませんか?また、
- 生活保護を受ける前に作ったクレジットカードを使えるかどうか
- クレジットカードが使えないかわりに、デビットカードやプリペイドカードが使えるのか
- 生活保護を受給する注意点
などもお知りになりたいポイントではないでしょうか?
今回は、生活保護に密着したクレジットカードに関する正しい情報を、わかりやすく解説していきます。
これで安心して生活保護を受給することができ、他の支払い方法を選択して便利に生活することができるようになります。
この記事の目次
生活保護受給者はクレジットカードを利用できない
生活保護を受けている人は、なぜクレジットカードを利用することができないのでしょうか?
これから解説する下記3つの項目がわかれば、その疑問をすっきりと解決することができます。
(1)利用できない理由
(2)新しくカードを作ることもできない
(3)過去に作ったクレジットカードは使えるのか
利用できない理由
生活保護を受けている人がクレジットカードを利用できない理由は、生活保護法第60条に違反する恐れがあるからです。
生活保護法第60条では、被保護者(=生活保護を受けている人)の義務について定められています。改正される前の第60条では、
- 能力に応じて勤労に励む
- 支出の節約を図る
- その他生活の維持と向上に努める
とされていました。
しかし、平成26年1月に改正された生活保護法第60条では、
- 自ら、健康の保持及び増進に努める
- 収入、支出その他生計の状況を適切に把握する
の2項目が追加されています。
クレジットカードの利用は「収入、支出その他生計の状況を適切に把握する」に当てはまると解釈することができ、積極的に節約するように定められていることがわかります。
もちろん、クレジットカード利用を含めた支出を適切に把握することができれば、生活保護を受けている人でもクレジットカードの利用が認められると解釈することもできます。
しかし、実際に適切に把握して支出の節約を図れる人であるかどうかを判断するのは、受給者本人ではなくケースワーカーや行政機関です。
このように、生活保護受給者はクレジットカードの利用に強い制限がかけられているのです。
新しくカードを作ることもできない
生活保護を受給している人は、新しくクレジットカードを作ることができません。なぜなら、クレジットカードを作るためには、安定した収入を得ていることが条件となるからです。
生活保護受給者は、下記4つの条件をすべてクリアしているため、安定した収入を得ているとはいえないことは明らかです。
- 預貯金がない
- 働くことができない
- 年金や手当だけでは生活できない
- 扶養してもらえる親族がいない
そのため、生活保護を受給している人がクレジットカードを作ろうと思っても審査に落ちてしまう可能性が高くなるため、新しくクレジットカードを作ることができないのです。
過去に作ったクレジットカードは使えるのか
生活保護を受給する前に作ったクレジットカードは、原則として使えなくなります。クレジットカード作成を申し込んだときの信用情報が、生活保護を受給することによって変更されるからです。
過去に安定した収入があった場合でも、生活保護受給後は年収額や職業が変更するため、利用停止になる可能性が高くなるのです。
これらの理由があるために、生活保護を受けている人はクレジットカードを利用することができないのです。
それでは生活保護受給者が隠れてクレジットカードを使うとどうなってしまうのでしょうか?そのリスクについて解説していきます。
隠れてクレジットカードを使うリスク
生活保護受給者が隠れてクレジットカードを利用するリスクにはどのようなものがあり、どういったパターンで発覚してしまうのでしょうか?具体的に解説していきます。
実際に発見されるパターン
生活保護を支給する行政機関や福祉事務所は、必要に応じて銀行や信託会社に口座情報を報告させる権限があることが、生活保護法第29条で定められています。
保護実施機関が関係機関へ調査することによって、実際に発見されることになるのです。
受給のストップや減給にもなる
もし生活保護受給者がクレジットカードを利用していることが見つかってしまったら、受給停止や減給になる可能性が高くなります。
生活保護を受けている人は、以下の生活保護法第10章(第60条~第63条)で定められている義務を果たさなければなりません。
- 生活上の義務
- 届出の義務
- 指示等に従う義務
- 費用返還義務
生活保護受給者がこれらの義務を果たさなかった場合は、保護実施機関が事情や状況を考慮して具体的な判断を行うことになります。
実際に受給が完全にストップしてしまうのか減給になってしまうのかは、行政機関や受給者の状況などによって異なることが考えられます。
安心して生活保護を受けるためには、どのようなポイントに注意すればいいのでしょうか?生活保護を受給する上での注意点を、次の章で詳しく解説していきます。
生活保護を受給する上での注意点
生活保護を受けるためには、以下3つのポイントに注意する必要があります。
(1)ぜいたく品の購入はできない
(2)キャッシングなど借金はできない
(3)貯金はできない
これらの注意点を、クレジットカードの利用を含めながら解説してきます。
ぜいたく品の購入はできない
生活保護を受けている人は、ぜいたく品を購入することは認められていません。その理由は下記の3つによるものです。
- 生活保護法第60条で、支出の節約を図ることが義務付けられているから
- 処分できる資産は生活に充てることが受給するための条件となっているから
- 最低限度の生活を保障することが、生活保護制度の趣旨となっているから
ぜいたく品を購入することは、支出の節約を図っているとは言えず、最低限度の生活をしていることになりません。
生活保護を受けている人がぜいたく品を購入する行為を制限するために、クレジットカードの解約を求められることがあるのです。
キャッシングなど借金はできない
生活保護を受けている人は、キャッシングなどの借金をすることはできません。これは生活保護法第60条で、収入と支出その他生計の状況を適切に把握することが義務付けられているからです。
また生活保護を受けている人は、下記8種類の扶助を受けることができます。
- 生活扶助
- 教育扶助
- 住宅扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
一時的に大きな支出が必要になった場合でも、これらの扶助の申請すればキャッシングなどの借金をする必要はないのです。
また上記8種類の扶助は使用用途が決められているため、借金返済などに充てることはできません。
貯金はできない
生活保護を受けている人は、原則として貯金をすることができません。生活保護を受けるための条件として、預貯金や土地や建物などの資産を保有していないことというものがあるからです。
しかし、生活保護の受給が開始したあとに貯金していることが見つかってしまったら、すぐに受給がストップするわけではありません。
自立に向けた貯金や将来に備えた貯金であれば、常識の範囲内で貯金が認められることがあるからです。
生活保護を受けるためには、これら3つのポイントに気をつけなければなりません。では、生活保護受給者が持つことのできるカードには、どのようなものがあるのかをご紹介します。
デビットカードやプリペイドカードなら使える
生活保護受給者がクレジットカード以外に持てるカードには、
- デビットカード
- プリペイドカード
の2種類があります。
それぞれのカードの概要とおすすめする理由と、具体的にはどのようなカードがあるのかをご紹介します。
デビットカード
それではデビットカードの、
- 概要
- おすすめの理由
- デビットカード例
について解説します。
デビットカード概要
デビットカードとは、現金を使わずに決済することのできる口座と直結したカードです。カードで決済できる点ではクレジットカードと共通しています。しかし、口座から引き落とされるタイミングが異なります。
クレジットカードは決済するときに口座残高が0円でも、支払日までに口座残高があれば使うことができます。しかし、デビットカードはカードで決済する時点で口座残高が残っていなければ使うことができない点で、大きな違いがあります。
デビットカードおすすめの理由
デビットカードをおすすめする理由は、現金で支払うよりもポイントを貯めることができることです。現金で決済しても、
- 店舗独自のポイント
- Tポイント
- ポンタポイント
- 楽天ポイント
などを貯めることくらいしかできません。
しかしデビットカードを使って決済すれば、クレジットカードほどではないにしても、お得にポイントを貯めることやクレジットカードと同じ特典を受けることができるのです。
デビットカード例
デビットカードには、
- 楽天銀行VISAデビット
- イオンデビットカード
- ジャパンネット銀行デビットカード
- 三菱UFJ-VISAデビット
- 住信SBIネット銀行VISAデビット
といったものがあります。
どのデビットカードも、
- 銀行口座を開設しないと作れない
- 口座に残高が残っていないと使えない
- すぐに引き落とされる
という点は共通しています。
しかしデビットカードの
- 年会費
- ポイント還元率
- ATM手数料や振込手数料
などが、発行する金融機関によって異なります。
そのため確認してから利用しないと「現金で決済したほうがお得だった…」ということになってしまうため、よく確認するようにしましょう。
プリペイドカード
それではプリペイドカードの、
- 概要
- おすすめの理由
- プリペイドカード例
について解説します。
プリペイドカード概要
プリペイドカードとは、現金を使わずに決済することができるカードです。デビットカードとの大きな違いは、現金をチャージしないと使えないという点です。
プリペイドカードに現金をチャージする方法は、
- ネット口座からオンラインチャージ
- コンビニのレジで現金支払い
- 携帯電話会社で貯めたポイントをオンラインでチャージ
などがあります。
デビットカードは口座直結という仕組みであるため、お財布に貯まった小銭をカードにチャージすることはできません。しかし、プリペイドカードならコンビニのレジでお財布の小銭をまとめてチャージするといったことが可能になるのです。
プリペイドカードおすすめの理由
プリペイドカードならではの魅力には、以下のようなものがあります。
- 携帯電話の通話料などで貯めたポイントをチャージすることができる
- 使い過ぎを防ぐことができる
これらの便利な機能はデビットカードには付いていません。特にデビットカードは口座と直結しているため、口座に残高があるとわかっているとつい使い過ぎてしまうことがあります。
しかしプリペイドカードはチャージした金額だけしか使うことができないため、絶対に使い過ぎることはありません。
お金があるとわかっているとつい使ってしまうという人に、プリペイドカードはおすすめです。
プリペイドカード例
金融機関や通信サービス会社が発行しているプリペイドカードには、以下のようなものがあります。
- 三井住友プリペイド
- 楽天銀行プリペイドカード(JCB)
- Mastercardプリペイドカード
- dカード
- au WALLET プリペイドカード
- Vプリカ
などがあります。
特にインターネット決済専用のプリペイドカードは、店舗などで使うことができません。また、公共料金やガソリンスタンドなどでの支払いが制限されていることがあります。
あなたがよく使用する店舗で利用できるのかをあらかじめ確認するようにしましょう。
まとめ
生活保護受給者がクレジットカードを使えない理由を、最後までお読みいただきありがとうございました。最後にこの記事の内容を、6つのポイントにまとめます。
- 生活保護受給者がクレジットカードを利用できないのは、生活保護法で定められている義務を果たさなければならないからである
- 生活保護受給者がクレジットカードを利用した事実がバレてしまった場合は、生活保護法義務違反として受給ストップや減給されることがある
- 生活保護受給者がクレジットカードを利用することは、原則として認められていない
- 生活保護を受給する前に作ったクレジットカードを使うと、生活保護法義務違反になる可能性がある
- 生活保護受給者でもデビットカードやプリペイドカードを使うことができるが、手数料や年会費、利用制限などのデメリットを正しく理解することが大切
生活保護の受給者はクレジットカードを使うと、生活保護法義務違反になるリスクが高くなります。生活保護の受給停止を心配することなく安心して生活するためには、他の支払い方法を選択するようにしましょう。
そうすれば、あなたはもっと利便性の高い生活をすることができるようになります。